東京高等裁判所 昭和31年(ネ)2515号 判決
証拠を綜合すれば、被控訴人は、自己が常務取締役をしている会社の会計課長であつた控訴人がかねて訴外稲葉稔に金融をして月五分の利息を得ていることを聞知していたので、自らも亦同様の方法により利殖を図り度いと考え、控訴人に対し斡旋を依頼したところ、控訴人はこれを承諾し、前記の日に被控訴人より金百万円を受領した上同日この金員を右稲葉稔が当時代表取締役社長をしていた訴外新光自動車株式会社に対し控訴人名義を以て利息を月五分と定めて貸与し、その弁済の為に同会社振出、金額百万円、満期同年四月二十四日の控訴人宛約束手形一通の交付を受けたこと、その後控訴人は同年三月中右金百万円に対する月五分の割合による二ケ月分の利息として金十万円及び同年五月中同金員に対する月四分五厘の割合による二ケ月分の利息として金九万円をいづれも被控訴人に支払つたのであるが、右訴外会社が業績不振の為同年八月一日更生手続開始決定を受けるに至つたので、爾来控訴人は同訴外会社より右貸付金の利息は勿論元金の返済をも受けることができなくなり、延いて被控訴人に対しても元利金の支払ができないまゝ今日に至つたこと、をそれぞれ認めることができる。そして、これらの事実関係からすれば、本件の金百万円は控訴人が被控訴人よりこれを借入れたものではなく、控訴人が被控訴人の委託に基き自己の名義を以てこれを他に融資しその利息金を被控訴人に取得せしめる目的を以て被控訴人より受取つたものであつて、換言すれば、被控訴人と控訴人間に右金百万円の消費貸借が成立したものではなく、むしろ前記被控訴人の利息金取得を目的として控訴人をして右金百万円の管理処分をなさしめることを内容とする信託契約が右両者間に締結せられたものと解するのが相当である。
(奥田 岸上 下関)